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定価 本体 3000円(税別)
四六判 上製 ・278ページ
2016年 11月 5日 刊
ISBNコード:978-4-8269-0192-5
分類コード:C0040
NEURO-PHILOSOPHY AND THE HEALTHY MIND by Georg Northoff

脳はいかに意識をつくるのか 脳の異常から心の謎に迫る

ゲオルク・ノルトフ 著 高橋洋 訳

うつ・統合失調症・植物状態の患者の脳が明かす、心と意識の秘密とは――

「意識を脳の中に“見つける”ことはできるだろうか?」「自己の感覚や経験は、脳の神経活動とどう関係しているのか?」
精神科医であり神経科学者でもある著者は、意識のもどらない患者や自己の感覚が変質してしまった患者の脳に見られる異常を詳細に解析することによって、こうした疑問に答えようとしている。その結果、何もしていなときの脳神経活動「安静時脳活動」が環境と相互作用することによって意識や自己の感覚が生まれる可能性が見出された。
神経哲学のトップランナーが豊富な症例研究をもとに提示する、心と脳の謎への新たなアプローチ。

 

「哲学者であり、臨床医、神経科学者でもあるという類いまれなる経歴をもつ著者は、 専門的かつユニークな視座から自己やアイデンティティ、意識の問題に切り込み、 ある種の疾患や障害が心や脳、存在や時間といった古くからある疑問の解明に いかに有用であるかを示した」
トッド・ファインバーグ(マウントサイナイ医科大学教授)

「心と脳のハードプロブレムへの、かつてない興味深い視点」
ヤーク・パンクセップ(ワシントン州立大学)

こちらから、訳者あとがきをご覧いただけます。

目次

はじめに/謝辞

 

序章
心の「ハードプロブレム」
神経哲学
不健康な脳から健康な心へ

 

第1章 意識の喪失
神経障害から心の秩序へ
心は脳の内部に存在するのか?
心の統一性vs脳の非統一性
外因的かつ認知的な脳の見方
安静状態に基づく内因的な脳の見方
私たちは何を知っているのか?
私たちは何を知らないのか?

 

第2章 意識
非活動的な意識と活動的な脳
自己も植物的なのか?
意識の主観的な性質
意識的なコンテンツと無意識的なコンテンツ
コンテンツの循環的な処理
コンテンツと情報の統合
意識のコンテンツの広域化
安静状態における意識のレベル
安静状態と刺激の相互作用、そして意識
意識の神経素因と意識の神経相関
意識の形態は空間/時間的である
ハードプロブレムのソフトな解決
意識は脳の基本的な機能なのか?

 

第3章 自己
自己の本質
自己を調査する方法
脳内の自己を調査する方法
自己と主観性には正中線領域が関与する
主観性のタンゴ
社会化する自己
神経系における安静状態と自己の重なり
安静時の主観性
関係的な自己

 

第4章 抑うつと心脳問題
「遺伝子‐脳」問題
「世界‐脳」問題
遅効セラピーと即効セラピー――時間と脳
「時間‐脳」問題――ストレスと睡眠(の不足)
自己焦点化、身体焦点化の高まり
環境と心の相互バランスに対する注意の低下
脳の本質的な設計――正中線に沿う構造と相互バランス
関係的な自己
「心‐脳」問題vs「世界‐脳」問題

 

第5章 世界を感じる
世界とのつながりとしての情動的感情
「情動を持つ」vs「情動を感じる」
「情動を持つ」ことは「情動や世界を感じる」ことである
情動的感情は脳の内的な認知処理なのか?
感情と認知
島皮質の役割と感情の経験
身体と環境のバランス
情動的感情は関係的である
実存的な感情と世界
情動的感情をめぐる「自己」と「身体」の対話

 

第6章 統合失調症における「世界‐脳」関係の崩壊
社会的孤立と、世界と脳の断絶
感覚過負荷と、世界と脳の境界
「世界‐脳」関係の復元としての妄想、声、新たなアイデンティティ
根本的な混乱と世界からの自己の解離
脳の混乱と、安静と刺激の相互作用の喪失
統合失調症における自己と、世界と安静状態の不一致
統合失調症は、脳の安静状態の空間/時間的な障害なのか?
統合失調症が世界における私たちの存在について教えてくれること

 

第7章 アイデンティティと時間
世界と脳の不連続性vs自己とアイデンティティの連続性
通時的アイデンティティと共時的アイデンティティ
記憶とアイデンティティ
記憶と変化
身体と心
脳の時間的な不連続性――「私は私の脳なのか?」
脳の通時的な不連続性は人格の連続性の基盤なのか?
時間と自己の連続性
時間は神経レベルの脳の不連続性を自己の心理的連続性に変える
統合失調症と胎児組織移植の比較
脳による時間の構築
コーダ――存在、時間、そして脳

 

訳者あとがき (*こちらから、訳者あとがきをご覧いただけます)

参考文献

索引

著者紹介

ゲオルク・ノルトフ

神経科学者、哲学者、精神科医。カナダ・オタワ大学精神保健研究所教授で、心・脳・精神倫理研究ユニット長も務める。

うつや統合失調症などの患者の脳と健常者の脳とを比較することで、意識や自己といった高度な心的機能と神経的・生化学的メカニズムとの関係を研究する。神経科学と哲学の融合分野である神経哲学の第一人者であり、その成果は260篇以上の論文に報告されている。

翻訳者紹介

高橋洋

翻訳家。同志社大学文学部文化学科卒(哲学及び倫理学専攻)。
訳書にドイジ『脳はいかに治癒をもたらすか』、ドゥアンヌ『意識と脳』、レイン『暴力の解剖学』(以上、紀伊國屋書店)、クルツバン『だれもが偽善者になる本当の理由』(柏書房)、ダン『心臓の科学史』、エリオット『脳はすごい』、ベコフ『動物たちの心の科学』(以上、青土社)ほかがある。

書評情報

読売新聞 2016年12月11日 岡ノ谷一夫(生物心理学者・東京大学教授)

臨床心理学 2017 Vol.17 No.3 岡野憲一郎(京都大学)

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