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定価 本体 2700円(税別)
四六判 上製 ・446ページ
2015年 1月 5日 刊
ISBNコード:978-4-8269-0177-2
分類コード:C0045
THE GAP: THE SCIENCE OF WHAT SEPARATES US FROM OTHER ANIMALS by THOMAS SUDDENDORF

現実を生きるサル 空想を語るヒト 人間と動物をへだてる、たった2つの違い

トーマス・ズデンドルフ 著 寺町朋子 訳

なぜチンパンジーはヒトになれなかったのか?
すべてを変えたのは私たちの心が持つ「2つの性質」

 

人間が言葉を操り、歯車を発明できたのは、心の力、つまり知的能力のおかげだ。動物にもこれと似たような知的能力はあるのだろうか? 類人猿は手話を使って意図を伝達し、霊長類やクジラは集団特有の行動を子どもに伝える。飼っている犬や猫は、あたなの心を推察しているようにみえる。こうした行動は、人間と同じような知的能力からくるものなのだろうか?
著者は、動物行動学、心理学、人類学などの広範な研究成果から、動物と人間の知的能力の違いをさぐり、私たちの心がもつ2つの性質が高度な知性と人間らしさを生みだす様子を描きだす。

目次

第1章 最後の人類
人間観の変化/ヒトの進化/進化の連続性と心のギャップ/消えたホミニン/ネアンデルタール人の血

 

第2章 生き残っている親類たち
霊長類とひとくちに言っても/類人猿の分類/脳の大きさでギャップを説明できるか

 

第3章 心と心の比較
「大層な」解釈と「簡素な」解釈で揺れ動く科学/空想する力が重要なわけ/見えなくても、心のなかにある/鏡は頭のなかに、もう一つの世界をつくる/できないことを証明する/心の進化

 

第4章 話す類人猿たち
絵と言葉に共通する能力/普遍文法は存在するか?/相手のことが考えられなければ、言葉は無意味だ/動物は言語を持つか?/類人猿は単語を組み合わせて話をする

 

第5章 時間旅行者
記憶は未来のため/お粗末な記憶の対価/生存に有利な未来志向/過去と未来を共有する/動物もまた、時間旅行者か?/過去を思う鳥/専門的で融通が利かない

 

第6章 心を読む者
ひとりでにつながり始める心/時間旅行との共通点/心を読んでいるのを証明するには/「心の理論」の発達に終わりはない/動物も他者の意図をくむ/心の分かち合いから、協力へ

 

第7章 より賢い類人猿
知能検査は何を測っているか?/情報を「まとめ」「組み合わせる」こと/みんな小さなアインシュタイン/創造性でも再帰的思考がカギに/動物の多彩な知能/チンパンジーの優れた作業記憶容量/無限に応用できる知能

 

第8章 新しい遺産
協力と裏切りの力学/文化の継承はもう一つの遺伝/つべこべ言わず模倣せよ/教育と学習にはさまざまな心的能力がかかわる/文化はふつうの人が積み上げたもの/動物も集団独自の伝統を引き継ぐ/動物には見られない「過剰模倣」/教育はあるが、教える意欲は低い

 

第9章 善と悪
道徳観は生まれながらのものか?/天使と悪魔/宗教は同じ圧力の存在を保証する/直感や衝動を覆す/故意と過失の区別と、自己欺瞞/いろいろな動物が共感や同情を見せるが/動物は社会的圧力をかけないかもしれない/道徳で見られるギャップ/類人猿を法で裁くのは妥当か?

 

第10章 ギャップにご注意
ギャップを生みだす本能/子育ての協力とおばあちゃんの知恵/強力な選択圧に

 

第11章 現実のなかつ国
ホミニンの出会い/数百万年前の人類の心を探るには/二足歩行がギャップの起源かもしれない/次々に出てくるホミニン/最初のヒトは器用だった/大成功した最初のホモ属──その心の進化/入れ子思考誕生をにおわせる石器/言語の萌芽/人間らしい心の証拠/同じくらい進化していた「いとこ」たち/道徳の裏返し

 

第12章 どこに行くのか?
現代の難題を生んだのもギャップだが、解決するのもギャップだ/検証は終わらない/遺伝学と神経学がさらにギャップを解剖する/ギャップの未来

 

謝辞
訳者あとがき
参考文献
原註

著者紹介

トーマス・ズデンドルフ

クイーンズランド大学の心理学教授。人間の心の進化に関する謎の解明に取り組んでおり、これまでにアメリカ心理学会や科学的心理学会、オーストラリア社会科学学術会議などの賞を受賞したほか、研究成果は『ニューヨーク・タイムズ』紙や『ディスカバー』誌、『サイエンス』誌、『ニュー・サイエンティスト』誌などでも取り上げられている。現在、オーストラリアのブリスベーンに在住。

翻訳者紹介

寺町朋子

翻訳家。京都大学薬学部卒業。企業で医薬品の研究開発に携わり、科学書出版社勤務を経て現在に至る。訳書に、ホルト『世界はなぜ「ある」のか?』、スティップ『長寿回路をONにせよ!』、ブレイ『ウェットウェア』(共訳)、ロビンソン『図説アインシュタイン大全』、ラスロー『柑橘類の文化誌』、クラムバッカー『数のはなし̶̶ゼロから∞まで』(共訳)ほか多数。

書評情報

読売新聞 2015年1月25日 岡ノ谷一夫(生物心理学者、東京大教授)

日経サイエンス 2015年3月号 森山一道(サイエンス・ライター)

信濃毎日新聞 2015年3月1日 東えりか(書評家)

しんぶん赤旗 2015年4月26日 松沢哲郎(京都大学霊長類研究所教授)

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