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新刊

定価 本体 2700円(税別)
四六判 上製 ・302ページ
2019年 3月 7日 刊
ISBNコード:978-4-8269-0209-0
分類コード:C0040
Rigor Mortis by Richard Harris

生命科学クライシス 新薬開発の危ない現場

リチャード・ハリス 著 寺町朋子 訳 篠原 彰 解説

効果を再現できない医薬研究、約90%
捏造や改ざんよりも根深い、科学のタブーを暴く

 

製薬企業が53件の研究を追試したところ、結果を再現できたのはそのうちわずか6件。
再現失敗率、約90%――

 

命を救うはずの研究が、低すぎる再現性のために、無用な臨床試験、誤った情報、虚しい希望を生みだし続ける。ずさんな研究はなぜ横行するのか? その影響はどこまで及ぶのか? 改革は可能か?

 

トップ研究者から、政府組織の要人、業界の権威や慣習に立ちむかう「反逆児」、臨床試験に望みを託す患者まで、 広範な調査・取材を基に、ひそかに生命科学をむしばんできた「再現性問題」の全貌をあぶりだす。

 

【次々と明らかになる、ずさんな研究の実態】

  • 乳がん細胞と黒色腫細胞を間違えて、1000件以上の乳がん研究がおこなわれた
  • 糖尿病や心臓病などの疾患との関連が報告された遺伝子の98.8%が、のちに関連が否定された
  • 実験の結果が出た後に、それをうまく説明できるように仮説を立てなおすことが横行している
  • わずか数匹のマウスの実験結果をもとに、人での臨床試験がおこなわれた
  • マウスで開発された敗血症治療薬150種類すべてが人では効果がなかった

……生命科学では、いったい何が起きているのか?

目次

はじめに

 

第1章 製薬業界を揺るがした爆弾発言
再現できない
基礎研究に忍び寄る危機
鈍化する新薬の開発
臨床試験に望みを託す患者
65~80パーセントが失敗するがんの臨床試験
間違った研究に群がる科学者たち
再現性の危機

 

第2章 無数の落とし穴
生命現象は目に見えない
問いかけ方で変わる答え
間違った手がかりを追いかける
失敗は成功のもと、という思いこみ
研究者を振り回す235種類のバイアス
実験者という不確定要素
研究者の保身

 

第3章 バケツ一杯の冷や水
ALS研究の高い失敗率
動物実験には基準がない
資金調達の問題
無駄な試験に巻きこまれる
動物実験は信用できるのか

 

第4章 惑わすマウス
マウスに無害な薬は人間でも安全?
ずさん、見当違い
薬を評価する機械じゃない
モデル動物に取って代わる
理屈どおりにいかない

 

第5章 疑惑の細胞と抗体
研究室にはびこるがん細胞
乳がんに間違えられた細胞
シャーレで起こる進化
細胞認証に残る課題
抗体が機能しない!
論争を生んだ抗体
抗体試薬の4割に不備

 

第6章 結論に飛びつく
バッチ効果
ノイズに幻影を見る
生物学を翻弄するビッグデータ
統計学者が否定する統計
ゴールを動かす

 

第7章 自分の研究をさらせ
探索か、確認か
すべてを共有する
協力をはばむ競争
密室状態のがん研究
教育からテコ入れ

 

第8章 壊れた文化
ノーベル賞受賞者をも誤らせるプレッシャー
行き場のないポスドク
インパクトファクター至上主義
不正と論文撤回
科学文献に放置される間違い
科学者の3分の1で「疑わしい行為」
行きすぎた競争

 

第9章 精密医療のハードル
作業の標準化
おなじみの落とし穴
文献の海
柔軟な臨床試験

 

第10章 規律をつくり出す
研究を研究する研究
基礎研究にも基準を
システムを変える
長期的な視点も

 

謝辞

解説 篠原彰(大阪大学蛋白質研究所教授)

訳者あとがき

参考文献

著者紹介

リチャード・ハリス

科学ジャーナリスト。科学・医療・環境の分野で活動し、ナショナル・パブリック・ラジオの記者として30年以上の実績がある。Science誌を発行するAAAS(アメリカ科学振興協会)の科学ジャーナリズム賞を3回受賞している。ワシントンDC在住。

翻訳者紹介

寺町朋子

翻訳家。京都大学薬学部卒業。企業で医薬品の研究開発に携わり、科学書出版社勤務を経て現在にいたる。訳書にデステノ『信頼はなぜ裏切られるのか』、ズデンドルフ『現実を生きるサル 空想を語るヒト』(以上白揚社)、トリー『神は、脳がつくった』、キルシュ&オーガス『新薬の狩人たち』ほか多数。

解説者紹介

篠原 彰

大阪大学蛋白質研究所教授、理学博士。一九六四年生まれ。DNAの組換え反応にかかわる遺伝子、タンパク質の機能を研究し、その分子メカニズムの解明を目指している。

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